健康経営が定着しないのはなぜ?形骸化を防ぐ5つの確認ポイント

健康診断やストレスチェック、健康セミナーなどを実施していても、「参加者が固定されている」「効果が分からない」「現場に必要性が伝わらない」と感じることがあります。

こうした状態を見直すには、施策の数よりも、施策が経営課題や評価・改善につながっているかを確認することが重要です。

経済産業省は、健康経営を「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と説明しており、健康経営が単発の施策で終わりやすい原因と、社内への定着に向けて確認したい5つのポイントを解説します。

健康経営が「実施しただけ」になりやすい理由

健康経営が継続的な改善につながらないときは、個々の施策が経営課題や評価から切り離されていることが多く、施策の目的が経営課題と結び付いていないんです。

「健康セミナーを年3回開く」といった目標は、実施状況を確認するには役立つのですが、それだけでは何を改善したいのか、テーマや対象者が適切だったのかを判断することはできませんので、先に確認したいのは、自社が解決したい課題を明確にするようにしましょう。

その課題を把握したうえで、それに対応する施策と評価方法を決め、施策の実施自体を目的にしないことが出発点となります。

推進を担当部署だけに任せている

健康経営は人事や健康管理部門だけで完結するものでもなく、経営層が方針を示し、担当部署がきちんと制度を設計しても、現場で利用しにくければ施策は機能しませんし、反対に、現場任せでは全社的な課題への対応や継続的な評価が難しくなります。

経営層、担当部署、管理職、産業医や保健師などの産業保健スタッフについて、誰が方針を決め、誰が実行し、誰が評価するのかを整理する必要があります。

健康経営の定着度を確認する5つのポイント

健康経営の状態は、方針から改善までの一連の流れで点検することができます。

経済産業省の「企業の『健康経営』ガイドブック」は、健康経営の取り組みを次の4項目に大別し、その前提として5番目の「法令遵守・リスクマネジメント」を位置付けています。

  1. 経営理念・方針
  2. 組織体制
  3. 制度・施策実行
  4. 評価・改善
  5. 法令遵守・リスクマネジメント

自社の取り組みを確認する場合、この枠組みを次のような問いに置き換えることができます。

  • 経営理念・方針:健康経営によって対応したい経営課題が明確か
  • 組織体制:経営層、担当部署、現場、産業保健スタッフの役割が決まっているか
  • 制度・施策実行:把握した課題に対応する施策を選んでいるか
  • 評価・改善:結果を確認し、次の施策へ反映しているか
  • 法令遵守・リスクマネジメント:法令を守り、健康情報を適切に扱っているか

制度・施策実行だけが充実していても、目的や評価方法が不明確では改善につながりませんので、新しい施策を追加する前に、5項目のどこで流れが止まっているかを点検してみましょう。

施策から改善までを一つの流れにする

健康経営を定着させるには、課題、施策、測定、改善を一つの流れとして設計します。

経営課題から指標を逆算する

効果を測るときは、「実施できたか」と「期待した変化があったか」を分けて考え、たとえば研修の開催回数や参加率は、施策の実施状況を確認する指標となり、研修後の理解度や対象となる行動の変化は、施策後の変化を確認する指標となります。

経済産業省の「健康投資管理会計ガイドライン」は、PDCAを回すうえで、投資の目的や効果に関するKPIを設定することが重要だとしています。

KPIとは、目標への進み具合を確認するための指標であり、健康投資とその効果を経営課題に結び付ける「健康経営戦略マップ」の活用も推奨しています。

ただし、同ガイドラインは、健康のすべてを量的・金銭的指標だけで表すことはできないとも指摘しており、参加率などの測りやすい数字だけでなく、従業員の意見や利用しにくかった理由なども確認し、複数の情報から判断することが必要です。

測定結果を次の判断に使う

効果測定は、成果を報告して終わりではありません。

結果を次の判断に使うことで改善につながりますので、施策の実施後は、以下の点を確認します。

  • 当初設定した課題に変化があったか
  • 想定していた対象者に施策が届いたか
  • 参加や利用を妨げる要因がなかったか
  • 継続、修正、終了のどれが適切か

期待した変化が見られなかった場合も、施策そのものが不要だったとは限りません。

周知方法、実施時間、対象者の設定など、実施方法に改善余地がないかを振り返ってみましょう。

効果測定で健康情報を扱う際の注意点

健康経営の効果を測る場合でも、従業員の健康情報を目的や範囲を定めずに収集・共有することは避けなければなりません。

厚生労働省の指針では、健康診断などを通じて得られる労働者の心身の状態に関する情報のほとんどが、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に当たるとされています。

同指針は、事業者に対し、情報の利用目的や取扱方法、取り扱う人とその権限、情報の範囲、適正管理の方法などを取扱規程に定め、労使で共有することを求めています。

実際の運用は、情報の種類や利用目的、事業場の体制によって異なり、個別の健康情報を扱う場合、取扱規程と関係法令を確認し、必要に応じて産業医などの専門職へ相談してください。

健康経営を社内に定着させるには、施策を増やす前に、目的から改善までの流れがつながっているかを確認する必要があり、覚えておきたいのは、次の5点、

  • 経営課題と健康施策を結び付ける
  • 経営層や関係部署の役割を明確にする
  • 課題に対応した施策を選ぶ
  • 実施状況と施策後の変化を分けて測る
  • 健康情報を適切に取り扱う

まずは現在実施している施策を一つ選び、「何のために行っているか」「誰が責任を持つか」「結果をどう測り、次回にどう反映するか」を確認してみましょう。

答えが曖昧な箇所が、最初に見直す候補になります。